「播田君、いるかい……播田君?」



書斎に置いていった湯呑みをもって来た霎介さんは土間に座り込む私を見て珍しく驚いているように見えた。

何か言わなければ…


干上がったように動かない喉を、私はなんとかして動かそうとした。



「……あ………そ…介さ…」


もどかしい。
どうして自分がこんなにも弱いのか、
どうして体が動かないのか、
どうしてこんなに震えているのか、
どうして、


どうして………










ギュウ…







耳元で強張った身体をほぐすように、低音が囁く。




「ゆっくりでいい。
…息をはきなさい」

「ぁ……っく…うぇ……」






そうだ。
私は怖かったのだ。

清太郎さんをそんな風に見た事がなくて、
突然彼が違う人に見えて、
恐ろしくて身体が動かなかった。


声をあげて泣きじゃくる私を、霎介さんは落ち着くまで抱きしめていてくれた。






そして、私は気付いてしまった。





気付いてはいけないことに。
















私は、霎介さんを愛してる。

惹かれて止まない、何かを感じていたんだ。












きっと、これが初恋だった。