「宣伝を始めてすぐにご指名が入るなんて、あんたは運が良いんだか悪いんだか…」



奉仕先に向かう途中、叔母はなんとも言い難そうな表情で私を見ながらそう言った。



「あらどうして?
すぐにご奉仕先が決まったんだもの、良いのではないの?」

「いや、良いには良いんだけれどね…」


どうにも歯切れが悪い。


「あんたはこっちに来たばかりで知らないのは当然だけれどね、
あんたがこれから働く先の主人はね、ここらじゃ有名な"変人"なんだよ」


確か職業は小説家、ようするに物書きだが、その手の職の人間はそういうものだとよく聞く。
本当かどうかなんて定かではないのだけれど。


「まぁあんたは器量のある子だから大丈夫ね」


その着物も似合ってるよと、私の着ている真新しい若竹色の着物を見て言った。




しばらく歩いて着いたのは町外れの一軒家。
庭も縁側もある一階建て。

使用人を募集するだけあって、今のご時世から考えればそれなりに裕福みたい。



叔母は玄関先で挨拶もせずさっさと綺麗な造りの下駄を脱ぐと「ほら」と私にも上がるよう急かした。















「浅間さん、浅間さぁん」