「最近ママさんとどう?」


「えっ?」


記憶の引き出しをあけまくると


一度だけ竜ちゃんの前で泣いた日があったと思い出す


その時私は母の態度に限界で竜ちゃんに「助けて」


と叫んだのだった


「あぁ・・・平気じゃない?」



「なにそれ。意外と心配してんだけどね」


竜ちゃんは恥ずかしそうに下を向いた


その時私は始めて私の胸が高鳴った


人間に依存も頼りもしない私


自分で高い壁を作り


触れられることを拒んできた私の中に


始めて侵入してきた人物だった


「ありがとう。ここでいいよ」


「そう?気を付けて」


竜ちゃんは右手をヒラヒラさせすでに後ろを向いて歩きだしていた



ふぅ・・・盛大な溜息を一つ


ボロイアパートの扉を開いた


見慣れた真っ白なパンプス


リビングへ続くドアを開ければ


キツイ香水のにおいに混ざりアルコールのにおいがする


これもいつも通り


明日は学校かぁなんて頭の端で思いつつ


散らばった母の服を洗濯機に突っ込み


弁当用にとお米を洗う


お弁当の準備と部屋を少し片づけていたら


もう1時半を回っていた


自分の部屋に入り


ベッドにダイブ


今日は疲れた


体はいつも以上に重く寝返りさえも億劫で


また明日から


正確に言えば今日から日常が繰り返されるのかと思うと


苦しくて強く目を閉じた