「頑張ってね竜ちゃん」


柔らかな微笑みを残し俺のもとを去っていく長い髪の女性


俺のことを一人で１５歳まで育ててくれた母親


仕事の都合ですでに高校のきまっている俺をこの町に残して出て行ってしまった


俺には父親がいない


母親は結婚することなく俺を育て上げた


実の父親にはあったことがないし母親が父親の話をすることはなかった




「ねぇ竜、今年は誰狙うの？」


超笑顔で話しかけてくるコイツは橋本　雅人（ﾊｼﾓﾄ　ﾏｻﾄ）


小学生からの付き合い


「ヒットする子はまだいねぇ」


中学生のころからしている遊び


始業式で見つけた可愛い子をどっちが先に落とせるかっていう簡単なゲーム


雅人も俺も悪い顔はしていない


むしろいいと思う


大量の生徒からお気に入りを探す


この時間がワクワクして俺は好きだった


その時俺の目に飛び込んできた一人の女の子


特別可愛い訳じゃない女の子


だけどその子から目が離せなかった


周りの女の子とは違う冷たいオーラを放っていて


まっすぐ見つめるその瞳はとても鋭かった


胸がドキンと１回なって名札を確認するとすぐに体育館から出て行った


「本宮」名前を心の中で何度も唱え一人で顔を赤らめる


こんな気持ちは初めてで俺は何が何でも落とすことを決めた