人前で泣くなんて


私最悪だ


お互い何もしゃべらず規則的に時を刻む時計の音だけが


この狭い部屋の中響いていた


「ごめんね。迷惑かけて」


この沈黙を破ったのはまさかの私だった


「迷惑じゃないよ。俺もゴメン」


竜ちゃんのせいで私の築いてきた壁が崩れていく


誰も私の中には入れなかった


それなのに竜ちゃんは私の壁を簡単に破りどんどん入ってくる


「一個聞かせて。あの傷はどうしたの?」


言うべきかごまかすべきか


考えても答えは出なかった


「まさか・・・ママさんがやったとか言う?」


今までにないぐらい心臓が跳ねあがり息苦しさを覚える


これ以上・・・私の中に入ってこないで。


竜ちゃんの言葉一つ一つが怖かった


壁は崩壊寸前でそれでも竜ちゃんは私を


「今日は泊まりな?こんな彩花帰せない。大丈夫もう何もしないから」


優しく抱きしめた


私のブラウスのボタンを留めすっと立ち上がると


「晩御飯作ってくるからそこでそうしてな」


出て行ってしまった


暗い部屋に一人


思い出すのはパパのぬくもり


この人の前では私が壊れてしまう