「イイ顔。もっといじめたくなる」


 ……コイツ……。

「っこの……超ド級サド!」

 あたしは泣きそうなのを堪えて声を張り上げた。


 そうでもしないと、かろうじて支えてる心すら、潰れてしまいそうだったから……。



「どうも。じゃあお前はマゾだな?」

「あ、あたしはいじめられて喜んだりしない!」

「ふぅん……どうかな?」


 黒斗は意味有り気に言うと、あたしの首筋に顔を埋める。
 舐められたと思った次の瞬間、チリッと小さな痛みを感じる。


「ぅっ…やっあぁ!」


 張り詰めた強気の糸の最後の一本が切れそうになる。

 目に溜まった涙が、一粒こぼれた。

「いじめられて感じてるなら、十分マゾなんじゃねぇの?」


 そんな風に言う黒斗に反論したかったけど、もうあたしは何も言えなかった。

 何か言ったら、大泣きしてしまいそうだったから。


 そのかわり、怒りだけは溢れ続ける。

 あたしはせめてもと黒斗を睨みつづけた。


「ここまでされてもまだ睨む気力あるんだ? 本気で気に入ったよ、友」

 そう言った黒斗は顎を掴んでいた手で頬を撫でる。


「じゃあこうしようぜ? 明日のお披露目後から俺はナイトとしてお前を守る。お前は守られた分だけ、報酬として俺にキスしろよ」