「ナイトの件だって似たようなもんだろ? 今更他に誰か相応しいやつがいるのかよ? 大体、先輩方になんて説明するつもりだ?」


 余裕の表情で嘲(あざけ)り気味に言う黒斗に、悔しさまで湧いてくる。



 怒りと悔しさで、あたしは怖さなんてすっかり忘れてしまった。



「冗…談じゃ……ないわ」


「ん?」


「あんたみたいなヤツの好きにされてたまるもんか」

 あたしは今ある怒りの全てを込めて、黒斗を睨んだ。


 こんなヤツに……こんなヤツなんかに負けるもんか!


 黒斗は、そんなあたしを観察するようにしばらく見てから、楽しそうに笑った。


「強気だなぁ。……良いぜ、そういう強気な女をいたぶるの、俺好きだし」

 尚もそんなふうに言う黒斗に、あたしの怒りは頂点に達しようとしていた。



「あんたがこんなヤツだと思わなかった。あたしを……皆を騙して、酷い……」

 そう言うと、黒斗は片眉を上げてイヤな笑みを作る。



「何言ってんだか。騙してるのはお前だって同じだろ?」


「っ!?」

 あたしは息を飲む。

 反論出来るわけがないから……。