──“シュウ”


その名前を口に出すたびに、私の心臓はギュッと掴まれたように苦しくなる。


その苦しみを和らげたくて深く息を吐き出すと、同時にグラスの中の氷がカランと音を立てて崩れた。




「…あたしもさ、夏芽に無理に誰かを好きになってもらいたいわけじゃないんだよ」



すっかり手が止まってしまったゆりあが、優しい口調で話し出す。



「だけど、夏芽はあれからずっと男の人と関わろうとさえもしなかったでしょ。

そろそろ少しは周りのメンズに目を向けてみてもいいんじゃない?」



そう言ったゆりあは、私達の雰囲気を変えるようにニコリと柔らかく微笑んだ。