原因は探るまでもない。


この症状は彼がいなくなってからだとわかりきっている。



誰よりも愛していた彼がいなくなったあの時から、私はずっと前へ進めないでいる。


“母は強し”なんて言うけれど、そんなことはない。


薬に頼らなければ眠ることさえ出来ないほど、私は弱い人間なのだから──。




だけど、今日の原因は全く違う。


隣人の情事を聞いてしまっただけのことで、決して安くはないこの薬を無駄に使いたくはない。



「…お茶でも飲もうかな」



安眠効果のあるカモミールティーがあったことを思い出して、私はゆっくり腰を上げた。