しばらくの沈黙の後、武田さんは掴んでいた俺のシャツを力無く離した。

「くそ…っ」と小さく声を漏らすと、苛立ちを抑えるように頭をガシガシと掻く。


そして一度深呼吸すると、俺を一瞥してこう言った。



「…ショージ、お前はお隣りさんのこと本当に本気で好きなのか?」



顔を上げると、武田さんの真剣な眼差しが矢のように鋭く俺の胸を射抜く。



「シングルマザーなら相手は結婚だって考えるだろうよ。もしそうなったら、今みたいに父親気取りなんかじゃいられねぇんだぞ。

それに、お前と彼女の間に子供が出来たら、今いる彼女の子供と同じように愛情を注げるか?
分け隔てなく接することが出来んのかよ?」