孝宏さんは「また連絡する」と言って帰っていった。

私も一度頭を冷やして冷静になろう…。


そう思いながら車に乗り込もうとした時、誰かがこちらに向かって近付いてくるのに気付いた。



ミディアムヘアの、小柄で可愛らしい女の子。


どこかで見たことがある…?


記憶を手繰り寄せている間にも、その子は明らかに私を目指して歩いてくる。

そしてすぐ傍まで来た時、忘れかけていた記憶が蘇ってきた。


この子は、確かショージさんの…



「…藤咲さん、ですよね?
叶の隣に住んでらっしゃる…」



もうすでに彼女も確信している様子で聞いてきた。

どうして私なんかに声を掛けてきたのかわからないけれど、とりあえず頷く。