『駄目元で掛けてみたんだけど…番号、そのままだったのか』


「うん……」



テレビに夢中になっている愛斗に、なんとなく背を向けて話す。

変な緊張感で汗が滲む。



『今度、会えないか?』



──予想していたとは言え少し戸惑う。

だけど、やっぱり私は会うつもりはない。



「…孝宏さん、私はあなたと話すことは何もないよ。もう新しい道を進もうと思ってるの」



“好きな人がいるから”


そう言ってきっぱり断ろうとした時。



『子供に会いたいんだ。
──俺達の子に』



“俺達の子”──…


その一言で、私が言いかけた言葉は喉の奥に飲み込まれた。