カズくんだけは知っていたのだ。秋がだいぶ前からこの指輪を買っていたことを。



“ただの誕生日プレゼントとして渡そうと思って買ったんだけど…、やっぱり俺が渡すべきじゃないんだよな。

あの子は好きな人からプレゼントされたいって願ってるんだから”



そう言って、買ったくせに結局渡すのを躊躇ってずっと自分で持ったままだったらしい。



『あいつ相当悩んでて、適当に彼女作ったりもしてたんだけど…

“俺が本当に好きな子は、好きになっちゃいけない子なんだ”って聞いた時点で、その理由はすぐわかったよ』



──まさか…そんな……


秋も、私と同じ気持ちだったの?



私は信じられない想いでその話を聞いていた。


一点の曇りもなく綺麗に輝く、ルビーの指輪を握りしめながら。