それでも中絶はしたくなかった。

自分の侵した過ちから逃げるようなことはしたくなかったから。



でもそんなのはエゴ。自分を正当化するための考えで、実際は一人で育てるには無理があった。


彼だって絶対家庭を捨てることは出来ないだろうし、私もそんなことは望んでいない。



どうすればいいのか……


一人で悩んでいても、お腹の中の命は確実に育っていく。

多少のつわりもあって、仕事も家事もままならない時もあった。



そんな私の様子に、秋が気付かないわけがない。


優しく問い掛ける秋に、私は言い訳も出来ず全てを話した。


家庭を持っている人との間に、子供が出来てしまったことを。