私達のアパートの前で、秋が女の人の方からキスをされた場面を偶然見てしまったのは、

誰にも内緒で愛人という立場になってから一年ほど経った頃のこと。



秋からは彼女の話なんて聞かなかったし、聞きたくもなかったけれど、当然いるだろうとは思っていた。


あれだけ魅力的な人なのだから、皆が放っておくわけがない。



…ただ、実際にその姿を目の当たりにした時のショックは想像以上で。


それまでずっと抑えてきたものが一気に溢れてしまいそうだった。



秋の心は此処にはない。


どうやったって私の手には届かない──。



そんな当たり前のことを改めて思い知らされた私は…

その日、初めて自分から彼に連絡を取った。