母が亡くなって、母の両親は実家の方に引っ越して来いと言ってくれたけれど、私も秋もそれを断った。


もう私達は自立していけたし、何より母との思い出が詰まったこの地を離れたくはなかった。


それに──私は秋と二人でいたかったから。





「…こんなこと言ったら、お母さんが怒りそうだけどね」



肩をすくめて嘲笑しながらそこまで話すと、私はもうすっかり冷えた紅茶に初めて口をつけた。


ショージさんは最初は驚きを隠せない様子だったけれど、今は何とも言えない難しい顔をしている。


それでも時々相槌をうちながら、真剣に話を聞いてくれていた。