こんな想いを抱いているのは私だけ──。


諦めなきゃいけない、絶対に。


自分にそう言い聞かせて、私は好きでもない人と付き合ったりしていた。

それでも、秋への想いがなくなることはなかったのだけれど。



そんなことを続けていたある日、母が脳溢血で倒れた。


女手一つで私達を養ってくれていた、その過労がたたったのだと思う。



私は母の反対を押し切って高校を卒業してから働いていた頃で、

秋も“安定した職を”と選んだ公務員の内定が決まって、やっと少しは母も楽になれるだろうと思った矢先のことだった。



──母の死は呆気なかった。


人の命はこんなにも脆いものなのかと、
その儚さと、寂しさと、母への感謝とで涙が止まらなかった。