「いや…、俺の方が楽しんじゃったかも」


「ふふっ。…私も」


「──本当に?」



俺は真面目な顔をして、畳みかけるように彼女に問い掛ける。



「楽しかったのは“母親”として?
それとも──“夏芽さん”としての意見?」



藤咲さんは不思議そうにキョトンとしている。



俺と一緒にいて、彼女自身は楽しかっただろうか──


それを知りたかっただけなのに、かなり遠回しな質問をしてしまった。



意味わかんねーよな…


心の中でため息を吐き出す。




「…もちろん、両方よ」



しばらくして聞こえてきた声にミラーを見上げると、彼女は笑顔で俺を優しく見つめていた。