…何かあったの──?


そう心の中で問い掛けるけれど、きっと私にその答えを聞く権利はないんだろう。


ショージさんにだって、自分の中にだけ秘めておきたい“何か”があって当然なのだから。


どこかはかなげで綺麗な彼の横顔が、それを物語っているような気がした。




少しの間、涼しくなってきた風が木々の枝葉を揺らす音と、愛斗が蹴るボールの音を黙って聞いていた。


不意にショージさんが、話題を変えるように「そういえば」と口を開く。



「マナトくんとどこか行ったりする予定ってないんですか?」


「えっ?」


「いや、さっきマナトくんが『友達は夏休みに家族と旅行に行くんだって。いいなぁ』って言ってたから…」