背が高くて、足が長くて、
さらりと流れる黒髪に、整った綺麗な顔。



愛しい姿がどんどん近付いて、もうすぐ手が届く距離にまで来た時、

私は彼を逃がすまいと、その身体に腕を回して抱きつく。



──すると、一瞬で。



捕まえたはずのあなたはもう何処にもいなくなっていて

空を切った私の腕には、白い粉雪がはらはらと舞うだけ。



凍るように冷たい真っ白な世界に、私は一人残されて

こぼれ落ちた涙が、身体に付いた雪を溶かした──。