時は過ぎ、今は夜。
新撰組は宿へと泊まることになった。

「明日には帰る。今日はしっかりと眠れ。」
「はい。」

土方の言葉に小さく微笑んだ夜神は布団の中へと入った。
規則正しい寝息が聞こえたのを確認した土方は、眠らずに部屋の外へと出る。
部屋の外では、沖田が壁に寄りかかって待っていた。
沖田は土方の姿を確認すると、何も言わずに場所を移動した。
しばらくして、沖田は立ち止まってから言った。

「急に呼び出してすいません。
ですが、夜神さんが不可解な言葉を口にしたので一応伝えておこうかと思いまして。
近藤さんに言う必要があるのか迷ったので、とりあえず土方さんに。」
「そうか。それで、不可解な言葉とは何だ。」
「今日の昼過ぎ、夜神さんに自分の立場を悪くするのを理解した上で、何故そのような行動をとるのか理由を聞いたところ、『その理由を言ってしまえば自分は新撰組を追い出される』と言ったんです。
それで追求したところ、『自分は昔、新撰組の敵だった時があり、土方さんとも刀を交えたことがある』と、後ろめたそうに言いました。」

そう言った沖田の拳は強く握り締められており、夜神の言ったその言葉を信じたくないという意思が感じられる。
土方は、今日はとりあえず休むことにし、また明日にでも詳しく事情を聞いてから判断を下すと言って、自分の部屋へと戻って行った。

部屋へと戻った土方は考える。
夜神ほどの実力を持った者と刀を交えた事があるのなら覚えているはず。
だが、そんな人物は土方の記憶に無い。
土方はどうにか思い出そうと過去を思い出してみる。
すると、一人だけそれらしい人物を思い出すことができた。
しかしその人物は、性格が夜神と正反対のものであり、夜神と似ているのは実力だけだった。

「・・・・まさかな。」

芽生えてしまった嫌な予感に、気付かない振りをして土方は眠りについた。