-キミの声が聞きたくて-


休み時間になり、長野と直人が俺の席、もとい美和の後ろにやって来た。


「2人とも、いつならヒマ?」
長野が明るい声で俺たちに尋ねる。

「俺、基本的にいつでもヒマだよ~」

長野に笑顔をふりまく直人。
「わ、分かった…//坂井くんは?」

あれ……?
長野、顔赤くないか……?

もしかして……

「ん…?俺も基本的にいつでもヒマかな」

そう答えつつも、長野の反応をみる。

直人ばっかり、見てるよな…?


なるほどね。

1人で納得した。
頑張れ直人。


そして俺はうれしくなって長野をガン見する。





………美和が見てるとも気づかずに。








美和side

朝からの集会も終わり、教室に入ってすぐ休み時間になった。

すると、雫と水野くんがこちらにやって来た。

雫は私の横に、水野くんは陸翔の隣に立ち話し出す。


その結果、全員がほぼ毎日ヒマだって分かったんだけど………


さっきから陸翔が雫を見つめてる気がする。

ううん、絶対に見つめてる。


もしかして陸翔、雫のこと好きになっちゃったのかな……?


あり得る。

だって雫、可愛いもん。


あぁ、やだ。
友達のこと、こんな風に考えちゃうなんて……


やだ………
モヤモヤするよ………






陸翔side


今日、俺たちは集まって遊ぶんだけど……

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「みんなヒマならいっその事泊まりがいいわね!!」

「いいね!俺も賛成。バーベキューとかしたいよな」

「でも、どこか泊まるトコ……」

「あ、それなら俺んトコの別荘は?近くに海があるけど………」

「え!!すごい!!でも、いいの!?」

「うん、俺は全然構わないけど…みんなは泊まり大丈夫?」

“コクン。コクン。”

「…大丈夫…だけど」

「じゃあ、決定ね♪いつ行く?」

「明日とかは?」

「いいねいいね!!」

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ってなワケで今日、直人んトコの別荘に4人で泊まります。









今日は夏休み初日。
俺たちは10時に直人の家の前集合。

で、今は9時50分。
10分も前に来てしまった。

美和に会えると言うことでどうも緊張してしまった俺は夜もあまり眠れず………


朝なんて5時に起きてから何を着ようかと悩み、6時。

それから朝飯を食べて、歯を磨いて、着替えて、支度して………

8時にはすべてが終わってしまっていた。
それからドキドキを鎮めながらテレビを見たり、部屋をウロウロしながら時間をつぶした。


俺の家から直人の家までは普通に歩いて10分弱。

そんな道のりを俺は9時30分に出てからノロノロ歩いて20分。


10前に着いてしまったというワケで…


「あちぃ……」


だいたい、7月半ばの外を20分も歩き回ったワケで……


俺の額にはじんわりと汗が浮かんでいる。

「あ……」

ふと前を見ると、2人の女子がこちらに向かって歩いてくる。



「美和……と、長野。」







なに、あの格好。

キャミの上から白の薄いTシャツ。
下はデニム生地のミニスカ。

超可愛いんだけど……

極めつけは髪型。
いつもは2つにわけて結ばれている長い髪の毛が、今日はお団子。


うなじ、ヤバいんですけど……


そんな風に思いながらも、焦りがバレないように平然とした顔で2人をみる。


「あ!坂井くんだ!!やっほ~おはよ~」


朝からテンションの高い長野は手をブンブンと振っている。


「ははは……おはよ」

そんな長野に俺は苦笑い。


ペコリ。

目の前にやってきた美和は“おはよう”のつもりかお辞儀をする。


「“おはよう”は、こうだろ……?」


俺はそう言うと美和の手を頭の位置まであげ、自分の拳と重ねた。


「…俺たちの“おはよう”だろ?」


俺がそう呟くと、美和は満面の笑みになって、コクン。と力強く頷いた。




美和side

今日は夏休み初日。

そして、お泊まりの日。
肩からは小さめのバッグを提げ、片手にはキャリーバッグ。


ちょっと多かったかなとも思ったけど、修学旅行以外でお泊まりなんて初めてで、何を持って行っていいのか分からなかった。

自分は案外ダメなのかもしれない。と、自信消失しかけながらも何とか雫との集合場所である“朔公園”まで来た。


今の時刻は9時50分。

もう直に雫が来るかな。
と思いながら辺りを見回す。


「美和~~♪」

いた。

後方からルンルンな足取りで走る雫が見えた。

ブンブン。

私は雫に向かって手を振る。


「おっはよ~」


テンション、高いなぁ(笑)
ま、しょうがないか。

大好きな水野くんとの初お泊まりだもんね。

しかも水野くんの別荘で。


すっごい嬉しいんだろうなぁ。

女の子って感じだなぁ。
ルンルンの雫を見ながら、微笑ましくなった。







「美和、超可愛い!!気合い入ってるね♪」
そう言って私を上から下まで舐めまわすようにみる雫。

気合い、入ってるように見えるの!?


普通に着てるつもりだったんだけど……いやいや、確かにいつもより服選びに時間かかったけど……


“そう言う雫もじゃん”

私が手話で雫に伝えると、
「当たり前~♪新しい服ばっかりよ」

そう言って“ふふん”とでも言わんばかりに得意気な雫。


どれだけ水野くんに惹かれてるのかがよく分かるなぁ。


そんな感じで合流した雫と水野邸を目指していると………





あ……………

陸翔だ………………


前方に陸翔を発見した。

水野邸と思われる家の前にある門に寄りかかる陸翔。

寄りかかっているだけでも、とても絵になる陸翔。


どこかのメンズモデルみたい…………

カッコいい………


ついつい陸翔に見入ってしまう。

いけないいけない…!!


私は雫に陸翔がいることを伝える。

すると……
「あ!!坂井くん!!やっほ~おはよ~」

テンションの高い雫は陸翔にも絡む。


め、珍しい……!!!
雫がブンブンと手を振っている……!!





陸翔の反応を見ると、苦笑い。

ははは……

だよね。
こんな雫のノリについていける人なんているのかな……

なんて時々思う。


そして“おはよう”の意味を込めて陸翔にお辞儀をした。


すると……

「“おはよう”はこうだろ…?」

と言って陸翔に右手を掴まれ、頭の位置まであげられる。

そして、陸翔の拳と重なる。

陸翔の手と触れているところがジンジンする。

熱を持って熱くなっていく手。

…………恥ずかしい。

「…俺たちの“おはよう”だろ……?」


そう言ってイタズラっぽく笑う陸翔にドクン。と胸が高鳴った。



こんなの、ずるいよ………








そんなところに、水野くんがやって来た。
「おはよ。みんな早かったね」
水野くんはニコッと笑う。

そんな水野くんの微笑みに雫は胸を打たれたみたい。

メロメロだね(笑)


「さ、乗って。」
そう言って水野くんが促した先には……


「リムジン!?」

雫が驚きのあまり声を荒げる。
私だってビックリ。


まさかここまでだとは………

陸翔は平然としてる。
…あ、そっか。
2人は幼なじみなんだよね?腐れ縁とか言ってたし……


そりゃ、見慣れたよね(笑)


1人納得しながらも、促された通りリムジンに乗り込んだ。




お泊まり、波乱の予感です。