「………いる///」
俯きながら呟く雫。
話して、くれた…!!
そのことだけで私は嬉しくて舞い上がる。
「……あれ?」
突然、すっとんきょうな声を出す雫。
“……?”
雫の言葉を待っていると、
「私、美和に話してなかったっけ?」
キョトンとなる。
“私、美和に話してなかったっけ”…?
そんな一言に驚きながらも、うれしさが込み上げる。
良かった。
雫は、話そうと思っててくれたんだ。
私は思わずニヤニヤしてしまった。
すると雫が、
「なぁにニヤニヤしてんのよっ」
チョップもどきをして来た雫。
雫には言わないけど、すっごく嬉しいんだからね…?
“えへへ”
私が肩をすくめて笑うと、雫も笑った。
“誰……?”
私が尋ねると、雫は“内緒だよ…?”と言ってきた。
私が誰にバラすというのだろう。
そう言うとこ、ちょっと抜けてるんだよね。
ま、可愛いから良いけど(笑)
雫はクラスを見回すと、何人か残っているのを気にしてか、手話で話し始める。
“み…ず…の…くん”
みずのくん………
水野くん……
水野くん!?
以外。
雫、水野くんが好きなんだ。
話してくれた雫に嬉しくて嬉しくて、笑顔で答えた。
“話してくれて、ありがとう。雫、大丈夫。頑張れ”
<話してくれてありがとう。雫なら大丈夫。頑張ってね>
私なりに伝えた、私の気持ち。
「……ありがとう」
私の言葉に雫も笑顔になり、雫の笑顔に私も笑顔になる。
なんか、友達とする恋バナって良いな。
改めてそう思った。
陸翔side
今日は夏休み直前。
明日から夏休みが始まるのだ。
そして今、朝から集会中。
“夏休み”を目前にしてみんな大はしゃぎ。
“家族で旅行に行く”だの、
“恋人とデート”だの………
高校生とは思えないくらい、浮き足立っている。
普通の高校生ってこんなもんなのか?
1人疑問に思いながらも校長のひたすら長い話を聞いていた。
長かった集会も終わり、体育館から教室に戻っていると、直人が話しかけて来た。
「夏休み、一緒に遊ぼーって。長野たちが」
振り返りざまにそう言う直人。
“一緒に遊ぼー”………?
って、俺もかな……?
今では普通に話せる美和。
だけど、何となく。
何となくだけど、違和感がある。
やっぱり、気持ちを伝えてしまったせいで、俺たちの関係が少し変わってしまったみたいだった。
「それって…俺もかな??」
自分を指さしながら、直人に尋ねると
「ははは…なに言ってんだよ。長野たち、“坂井くんと水野くんと…”って言ったんだぜ?目の前にいんのは俺なのに、陸翔の方が先に名前出てきたしな」
そう言ってまた笑う直人。
美和、俺と一緒に遊びたいって思ってくれたのかな……?
「だいたい、女子2対俺1とか無理だろ(笑)」
そう言って俺の肩を何度もたたく直人。
「いてぇよ…」
俺はそうつぶやきながらも、嬉しい気持ちが大きすぎて、全然いたくなかった。
……俺も嬉しいけど、
直人も嬉しいよな、そりゃあ。
直人だって、長野と遊べるの、嬉しいよな。
早く、夏休みにならないかな。
そんな風に考えながら教室に入った。
休み時間になり、長野と直人が俺の席、もとい美和の後ろにやって来た。
「2人とも、いつならヒマ?」
長野が明るい声で俺たちに尋ねる。
「俺、基本的にいつでもヒマだよ~」
長野に笑顔をふりまく直人。
「わ、分かった…//坂井くんは?」
あれ……?
長野、顔赤くないか……?
もしかして……
「ん…?俺も基本的にいつでもヒマかな」
そう答えつつも、長野の反応をみる。
直人ばっかり、見てるよな…?
なるほどね。
1人で納得した。
頑張れ直人。
そして俺はうれしくなって長野をガン見する。
………美和が見てるとも気づかずに。
美和side
朝からの集会も終わり、教室に入ってすぐ休み時間になった。
すると、雫と水野くんがこちらにやって来た。
雫は私の横に、水野くんは陸翔の隣に立ち話し出す。
その結果、全員がほぼ毎日ヒマだって分かったんだけど………
さっきから陸翔が雫を見つめてる気がする。
ううん、絶対に見つめてる。
もしかして陸翔、雫のこと好きになっちゃったのかな……?
あり得る。
だって雫、可愛いもん。
あぁ、やだ。
友達のこと、こんな風に考えちゃうなんて……
やだ………
モヤモヤするよ………
陸翔side
今日、俺たちは集まって遊ぶんだけど……
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「みんなヒマならいっその事泊まりがいいわね!!」
「いいね!俺も賛成。バーベキューとかしたいよな」
「でも、どこか泊まるトコ……」
「あ、それなら俺んトコの別荘は?近くに海があるけど………」
「え!!すごい!!でも、いいの!?」
「うん、俺は全然構わないけど…みんなは泊まり大丈夫?」
“コクン。コクン。”
「…大丈夫…だけど」
「じゃあ、決定ね♪いつ行く?」
「明日とかは?」
「いいねいいね!!」
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ってなワケで今日、直人んトコの別荘に4人で泊まります。
今日は夏休み初日。
俺たちは10時に直人の家の前集合。
で、今は9時50分。
10分も前に来てしまった。
美和に会えると言うことでどうも緊張してしまった俺は夜もあまり眠れず………
朝なんて5時に起きてから何を着ようかと悩み、6時。
それから朝飯を食べて、歯を磨いて、着替えて、支度して………
8時にはすべてが終わってしまっていた。
それからドキドキを鎮めながらテレビを見たり、部屋をウロウロしながら時間をつぶした。
俺の家から直人の家までは普通に歩いて10分弱。
そんな道のりを俺は9時30分に出てからノロノロ歩いて20分。
10前に着いてしまったというワケで…
「あちぃ……」
だいたい、7月半ばの外を20分も歩き回ったワケで……
俺の額にはじんわりと汗が浮かんでいる。
「あ……」
ふと前を見ると、2人の女子がこちらに向かって歩いてくる。
「美和……と、長野。」
なに、あの格好。
キャミの上から白の薄いTシャツ。
下はデニム生地のミニスカ。
超可愛いんだけど……
極めつけは髪型。
いつもは2つにわけて結ばれている長い髪の毛が、今日はお団子。
うなじ、ヤバいんですけど……
そんな風に思いながらも、焦りがバレないように平然とした顔で2人をみる。
「あ!坂井くんだ!!やっほ~おはよ~」
朝からテンションの高い長野は手をブンブンと振っている。
「ははは……おはよ」
そんな長野に俺は苦笑い。
ペコリ。
目の前にやってきた美和は“おはよう”のつもりかお辞儀をする。
「“おはよう”は、こうだろ……?」
俺はそう言うと美和の手を頭の位置まであげ、自分の拳と重ねた。
「…俺たちの“おはよう”だろ?」
俺がそう呟くと、美和は満面の笑みになって、コクン。と力強く頷いた。