-キミの声が聞きたくて-



「なにも出来ないけど、俺は美和の支えになりたい……」


拳を握りしめながら誓うように呟く陸翔。
そんなこと言ってくれる人、初めて……


たくさんの初めてに、思わず涙が溢れた。

「泣くなよ……」


スッと私の涙を人差し指で拭ってくれる陸翔。


「…俺ね…?…








































美和のこと、大切だよ。

美和のこと、好き。だよ……」




え…………?


陸翔が、私を………??


「……ごめん、こんなことを言うつもりじゃなかったんだ……」


頭をクシャクシャとする陸翔。


本当に………?







「………」

嬉しい。
好きな人に“好き”って言ってもらえるのって、こんなにも嬉しいことなんだ。


……だけど。

私は陸翔の気持ちに答えられない。


美波を傷つけておいて、幸せを奪っておいて、自分だけ幸せになるなんて出来ない。

だから陸翔、ごめんね。
こんな私を好きになってくれてありがと。

私なんかより、陸翔にはずっと良い人がいるから。


私の頬をツツーっと涙が伝う。


「美和……」


私の表情から察したのか、眉を下げる陸翔。


“ごめんね”

私は紙にそう書き、陸翔に渡した。



「……分かってたんだ。美和が俺を好きじゃないことくらい。」

突然、笑顔で話し出す陸翔。


だけど、その笑顔はニセモノで。
とても悲しそうに笑う陸翔。

やっぱり私は、好きな人を傷つけることしか出来ないんだ。








「……だけどさ、俺たちは友達のままだよな?だから、何かあったらいつでも頼って欲しいし、長野みたいに接してくれたら嬉しい。」


困ったように笑う陸翔に、私は頷くことしか出来なかった。


「…美和にはさ、長野がいて、直人がいて…家族がいて……俺がいるだろ?」


突然の投げかけに、コクンと頷く。


「…だから、何かあったらちゃんと頼れよ…」


そう言って私の頭をクシャクシャと撫でながら立ち上がる陸翔。


「…じゃあ俺、学校行くな。美和はどうする?休む?」

そう優しく問いかける陸翔に、“行きたい”という感情が芽生えた。


だけど……
私は顔をブンブンと横にふる。


「そっか…分かった。じゃあ、またな」


そう言って部屋から出て行く陸翔。

私はその背中を見つめることしか出来なかった。






陸翔side

ガチャン。
美和の家から出る。

「ふぅー…」

結局俺はなにをしに来たんだか……


長野から話を聞いて、いてもたっても居られなくて屋上を飛び出した。

だけど、美和に何か特別なことを言ってやることも出来なかった。


挙げ句に、自分の気持ちまで言っちまったし……

「カッコ悪ぃ……」

1人落ち込みながら学校へ向かう。


って言うか、サボっちゃおうかな……


いやいやダメダメ。
ちゃんと行かなきゃ。

直人と長野にちゃんと報告しなきゃだよな。


そうして俺は重い足を引きずるように学校へ進んだ。










































陸翔side


美和に気持ちを伝えてしまった日から一週間が経った。


あの日、学校に着くなり俺は長野と直人に色々と作り話を吹き込まれたっけな。

俺が屋上から飛び出した日、テストだったなんて知らなかったし、直人たちの迫真の演技で先生を騙したらしいし。

口裏合わせにと、俺が登校中におばあさんを助けただの付き添って病院まで行っただの………


直人らしいなって笑った。


それから、長野と直人にきちんと伝えた。

“美和に気持ちを伝えてしまった”ことを。


長野は悲しそうに……と言うより、怒りが見えたのは気のせいか?

直人は、何かを決意したような表情だった。


2人とも、人がフられたってのに違うこと考えてたし……


あんまりじゃねーか?

ま、2人にはたくさん支えられたし、感謝しなきゃな。







美和side


あの日、陸翔に告白された日。

雫からメールが届いていた。

“あんたの事だから、「美波が幸せになれなかったのは私のせい」だの「私だけ幸せになるなんて出来ない」だの、考えてるんでしょう?”


見透かされていた。

やっぱり、雫には適わない。
そんな風に思った。


“美和、あんたバカだよ。
そんな事、もう気にしなくて良いんだよ……?
美和は、幸せになって良いんだよ……
美波に、気を使うことない。
今ならまだ間に合うから。
坂井くんに気持ち、伝えるべきだよ”


雫にそう言われ、胸につかえていた何かが取れたように……

思いが溢れ出した。



伝えたい………
伝えたいよ………

陸翔に。
だけど、本当に良いのかな……?



もしかしたら、陸翔の気持ちは変わっているかもしれない。


そうだよ。
もう、私なんかのこと好きじゃない可能性のほうが大きいじゃん。


そんな風に悩んでいると、あっという間に一週間が経ってしまっていた。








私たちの席は相変わらず前後。

こんなにも近くにいるのに、遠い。


毎日、毎時間。
私は陸翔の背中を見ている。

こんなにも近くにいるのに、何でだろうね……?


こんなに陸翔の背中は、遠かった…?


あの日から一週間。
たった一週間で以前と変わらないようになった私たち。


だけど。

だけど、私たち前よりどこか遠い。


授業中、この陸翔の寂しそうな背中を見ると手を伸ばしてしまいそうになる。



“好き”



好き。好き。好き。………好き。




こんなにも、好き。


陸翔、思いを伝えてもいい……?


雫、ありがとう。
私、幸せになれなくても良い。


伝えたい。

今の、この気持ち、大切にしたい。




だから、伝える。







その日の放課後。

私は気持ちを伝えることを雫に相談しようと決心した。


放課後の教室には2、3人しか残っておらず話すなら今だと思った。


“雫”


私は雫に手話で話しかける。

学校で私が手話を使うことなんてめったにない。


だからか雫は少し驚きながらも返事をする。

「…どした……?」

不安そうな雫。

“……私、陸翔、気持ち、伝える、”

私が初めて手話を勉強したのは2年前。

まだまだあまり慣れない手話で雫に単語を並べて伝える。


それを確かめるように雫が声に出す。


「……私、陸翔、気持ち、伝える…?」


コクン。


私が頷くと、雫はパッと花が咲いたように笑う。


「…信じてた…美和のこと。」


その目には、かすかに涙が浮かんでいて……


自分がどれだけ雫に心配をかけたか、不安にさせたか……

雫の表情から分かってしまった。


“…雫、ありがとう…”