-キミの声が聞きたくて-


メールを開くとき、サブタイトルが目についた。


“真田美和です(o^∀^o)”


やっぱりメールも可愛い。

そして、俺のために書いてくれてるんだよなって思うと、なんだかくすぐったくなった。


メールを開くと、

“こちらこそ、
よろしくお願いします(o^∀^o)

ところで……
:)←このマーク、何??”

と書いてあった。


え、わかんなかったの!?


俺はすぐさま返信を打つ。


「:)←このマークわかんなかった??
携帯を横にしてみて(笑)」


俺なりの絵文字

……だったんだけどな





ピロリロリン♪


あ、メール来た♪♪

メールが来る度テンションが上がる俺。


“分かった!!
ニコニコマークだね(^_^)v
可愛いね♪(^0^ )
なんか、坂井くんらしいね”


俺らしい……か。
嬉しいな。


それから、たくさんメールをした。


思ったより自然体でいれることに驚いた。
真田、癒される。


ピロリロリン♪
また携帯が鳴る。

今は少し慣れて来たけど、携帯が鳴るたびに笑顔になっちゃうし打ってる時は緊張。

メールを開くと、

“坂井くんがいいのなら
是非(*^o^*)
私もいいよ!!そっちの方が嬉しいし”


ときた。



やった!!

俺がなんて打ったかと言うと……






「俺のこと、“陸翔”でいいよ:)
坂井くん、なんて面倒くさいしなX(

それで、もし良かったらさ。
俺も真田のこと“美和”って呼んでもいいかな??

メールしてて、もっと仲良くなりたいって思ったんだ。」


俺、頑張ったんだぜ??

今日の帰り道、直人に言われたんだ。


“下の名前で呼べるくらい、仲良くならなきゃな。おまえなら出来る♪”

って。


いや、まさかOKしてくれるとは……


でも、良かった。

めちゃくちゃ嬉しいし!!


明日からは下の名前で呼べるし、朝から新しい挨拶も出来るんだ。


なんか、今日でさな……美和との距離が一気に縮まったような気がする。


超やべぇ。

毎日が、楽しい。






朝になり、ワクワクしながら制服に袖を通す。

今日から、坂井くん……じゃなくて

り、りりり、陸翔///
って、呼んでいいんだよね!?

それに、美和って呼んでくれるんだよね?!

すっごく、すっごく嬉しい。

早く学校に行きたい。

そんな思いで早起きだってした。

いつもより10分も早いけど、お母さんに「何をソワソワしてるの」って言われたけど、気にしない。

だって、それくらい学校が楽しみなんだから。


「気をつけるのよ」
なんて何年ぶりに言われただろう。


お母さんの言葉にも嬉しくなりながらも、軽い足取りで学校へ向かった。




ガラガラ。


教室に入ると2、3人くらいしか居なかった。


もちろん、その中に陸翔がいるワケもなく。

少しガッカリしながらも、そりゃそうかと納得し席に着いた。


すると、

ガラガラガラっ

教室の扉が勢い良く開いた。


私はバッと扉の方を見る。

すると、

「はぁ…はぁ……」

息を切らしながらこちらに歩いてくる陸翔。

そして、陸翔は私の前にある彼の席に座った。

「ふぅっ……おはよ」

そう言って右手を頭の位置くらいに挙げ、私を見つめる。


ハイタッチめいた事。だよね。


私はポスッと陸翔の右手に左手を重ねる。

触れ合う手と手。

陸翔の手が触れてる場所が熱い。

陸翔の見つめる顔が熱い。






「…ちゃんと、“おはよー”だ。」


低く透き通る陸翔の声。

一言一言が私の心にジーンと響く。


ニッコリ笑う顔はやっぱり少年みたいに幼くて、可愛い。


女子のみんなから人気なのが良く分かる。

だって陸翔、顔だけじゃないんだもん。

顔もカッコいいのに、心も優しくて、暖かいんだもん。


好きに、なっちゃうよね。

そんなことを考えていると、自然と笑みがこぼれた。


「なーに笑ってんだか」

ポスッと頭を叩かれた。

だけど、全然痛くなかった。
いやじゃなかった。

むしろ、嬉しかった。







あんなに遠くに感じていた“坂井くん”が、今はこんなにも近くにいる。


手を伸ばせば、届いちゃうんだ。


“坂井くん”から“陸翔”になって。

頭に触れられるくらい、近くなったんだ。

それに嬉しくなった。


「美和」

突然、陸翔に名前を呼ばれる。


ドクン。

心臓の音が聞こえるんじゃないかってくらい、ドクンドクン。とうるさい。


“なに??”

心の中で言いながら、言葉にならない声の代わりに


「……?」


首を傾げる。



「何でもない♪」

陸翔がそんな思いがけない意地悪を言うものだから、なんだか嬉しくなった。


“美和”


今の声、多分、ううん、絶対。

一生忘れない。





美和と仲良くなって数日。

俺と直人、美和と長野で放課後よく遊ぶようになった。


もうすぐ梅雨だというのに俺たちはほぼ毎日のように遊ぶ。


ファミレスに行ったり、ゲームセンターに行ったり。

美和も楽しそうに笑ってるし、それを見た俺と長野も嬉しくなる。


ついでに言えば笑顔の長野を見るたびに直人が優しく笑うんだ。


もしかして。


そんな風に思い、直人に聞こうと思った

……けど、止めた。


直人は俺が“相談がある”と言った時、“待ってた”と言ってくれた。


だから……
だから、俺も直人を“待つ”から。


もうずっと一緒なんだ。

直人のこと、もっとわかってやれるようになるからな。


と、心の中で決意した。







そして、6月も始め。

「陸翔♪」

ハイテンションな直人が俺の肩を叩いてきた。

「…んだよ」

若干不機嫌な俺。

理由はって…??

「…陸翔、雨が降りそうだからって、んな顔すんなよ~」


直人が頭をヨシヨシしてくる。

そう、俺は雨が大嫌い。

荷物増えるし(傘とか)
風呂とかプールとか以外で濡れるのは好きじゃない。


そして、
梅雨に入ってから美和が時折悲しそうに窓の外を見てるから。


元気のない美和をみて、何も出来ない自分に腹が立つんだ。


「……雨の日に、さ。言うことじゃねーんだけどさ……」


俯きながらモジモジする直人。


もしかして。

「………陸翔に、ご報告が。」


そんな直人に俺はすかさず

「……“待ってた”よ??」

そう言った。