「いいわね♪」
笑顔で答える長野。
「あ、うん。え??」
「ま、その旨は美和に伝えとくわ」
それだけ言って立ち去る長野。
何だってんだよ……
ハイタッチめいた事。明日からすんだよな??
真田と手が触れると考えただけでドキドキして、緊張した。
なんか俺、ヘンタイみたい………
そんな風に考えては落ち込んだ。
その日の放課後。
帰ろうと立ち上がった時、制服の裾を引っ張られる感覚がしたから振り返った。
すると、後ろには俺の制服の裾を握り俯いている真田がいた。
ドクン。
そんな可愛いことされたらヤバいから。
「真田……?」
俺は平静を装って真田を呼ぶ。
すると、真田から手紙のような紙きれを渡される。
小さいメモ帳……??
ワケがわからず真田を見つめていると、握っていた制服を離した。
そして、
“またね、バイバイ”
口パクでそう言い走り去る真田。
真田の口が動くのを初めて見た。
その口で、可愛い声を出す真田を想像してしまったんだ。
俺は真田からもらった紙を握る。
そして、堪らなく“好きだ”と思ってしまったんだ。
そして、渡された紙を開いてみると
“坂井くんへ
雫から聞きました。
ありがとう。
明日から、楽しみです。”
うわ、嬉しいって、楽しみだって!!
思いがけない真田からの手紙にテンションが上がる俺。
あれ、まだ何か書いてある。
“それから……
『miwa-********@ne.jp』
良かったら、メールしませんか?
もっと坂井くんと仲良くなりたいです。
真田。”
うそ……!?
これ、真田のアドレス?!
マジ!?
メール、してもいいの!!?
柄にもなく大喜びする俺。
「陸翔、帰ろーぜっ」
そう言って後ろからど突いて来た直人。
いつもなら怒るけど、今の俺は無敵だ!!とか意味不明なことが頭の中で繰り返される。
「おう♪帰ろーぜ」
「あ、あぁ」
テンションが高い俺に引き気味の直人。
帰り道、ルンルンの俺に直人が尋ねて来た。
「何か良いことでもあったの?」
「よくぞ聞いてくれました~。」
柄にもないのもほどがある。
自分でもわかってるけど、嬉しすぎてニヤケてしまう。
「真田からアドレスもらった!?陸翔、それは凄いぜ??真田と言えば男嫌いで有名なんだからな」
知らなかったことを直人から聞く。
真田、男子苦手そうだもんな。
…って、俺は男子じゃないってこと?!
軽くショックなんだけど。
なんて2人で色々と話しながら帰った。
家に着き、“ただいま”その一言すら言えないくらい緊張していた。
ダッシュで階段を駆け上がり、部屋に入るとすぐにベッドにダイブする。
「ふあ~……」
緊張、緊張、緊張。
携帯をゆっくり開き、真田からもらった紙を見ながら慎重にアドレスを登録する。
カチ、カチ、カチ。
一文字一文字をゆっくり、丁寧に打っていった。
今、真田のアドレスを打ち込んでいる自分がなんだか夢のようで。
「……よし。」
俺は気合いを入れてメール作成画面を開く。
「さか…い…りく…と…です…メアド…あり…がと…な…」
俺は一言一言を読みながら打ち込んでいった。
出来たメールは、
“坂井陸翔です。
メアドありがとな。
これからよろしく:)”
これだけの短いメールだけど、作成するのに5分もかかった。
それだけ、力を入れて書いたんだ。
「そーしんっ」
俺は大きな声を出して送信ボタンを押す。
「うわ~……」
返信が来るまで緊張、続くんだろうな。
ううん、返信が来るまでなんかじゃない。
“これからずっと”
だな。
俺が真田を思い続ける限り。
ベッドに寝転び、部屋の天井を眺める。
すると、
…♪………~♪~
「うわっ」
握っていた携帯が突然鳴りだしたものだから、驚きのあまり大きな声が出た。
ディスプレイをみると
“真田美和”
そう書かれていた。
その文字に、ドキドキが止まらなかった。
メールを開くとき、手が震えた。
メールを開くとき、サブタイトルが目についた。
“真田美和です(o^∀^o)”
やっぱりメールも可愛い。
そして、俺のために書いてくれてるんだよなって思うと、なんだかくすぐったくなった。
メールを開くと、
“こちらこそ、
よろしくお願いします(o^∀^o)
ところで……
:)←このマーク、何??”
と書いてあった。
え、わかんなかったの!?
俺はすぐさま返信を打つ。
「:)←このマークわかんなかった??
携帯を横にしてみて(笑)」
俺なりの絵文字
……だったんだけどな
ピロリロリン♪
あ、メール来た♪♪
メールが来る度テンションが上がる俺。
“分かった!!
ニコニコマークだね(^_^)v
可愛いね♪(^0^ )
なんか、坂井くんらしいね”
俺らしい……か。
嬉しいな。
それから、たくさんメールをした。
思ったより自然体でいれることに驚いた。
真田、癒される。
ピロリロリン♪
また携帯が鳴る。
今は少し慣れて来たけど、携帯が鳴るたびに笑顔になっちゃうし打ってる時は緊張。
メールを開くと、
“坂井くんがいいのなら
是非(*^o^*)
私もいいよ!!そっちの方が嬉しいし”
ときた。
やった!!
俺がなんて打ったかと言うと……
「俺のこと、“陸翔”でいいよ:)
坂井くん、なんて面倒くさいしなX(
それで、もし良かったらさ。
俺も真田のこと“美和”って呼んでもいいかな??
メールしてて、もっと仲良くなりたいって思ったんだ。」
俺、頑張ったんだぜ??
今日の帰り道、直人に言われたんだ。
“下の名前で呼べるくらい、仲良くならなきゃな。おまえなら出来る♪”
って。
いや、まさかOKしてくれるとは……
でも、良かった。
めちゃくちゃ嬉しいし!!
明日からは下の名前で呼べるし、朝から新しい挨拶も出来るんだ。
なんか、今日でさな……美和との距離が一気に縮まったような気がする。
超やべぇ。
毎日が、楽しい。