-キミの声が聞きたくて-


次の日、学校に行くと坂井くんはすでに席に着いていた。


私が席に向かっていると、坂井くんの席の前で坂井くんと目が合った。


「あ、真田!おはよっ」

相変わらずニカッと少年のようなスマイルを見せる坂井くん。


だけど、そんな彼に私は返事すら出来ない。

どうしようもなく情けなくて、悲しくて……

今日も私は挨拶をしてくれる坂井くんに頷くことしか出来ない。



もどかしくて、もどかしくて。




こうなったのは、自分のせいなのに。

こんな風になってしまった自分を恨んだ。





そんな時、雫からアドバイスが。

“坂井くん、美和のこと知ってるんだし。2人だけの挨拶を考えるとかは?”

とのこと。


2人だけの挨拶。ねぇ……


どうしよう…



休み時間になり雫がなにやら坂井くんを呼び出していた。



「……?」



教室の端で話す2人に耳を傾ける。

「…これは?」
「…ないからっ!!///」


坂井くんの叫び声が聞こえる。

何を話してるのかな??






朝。
人も少ない教室。
俺は席に着き考え事をしていた。


今日は直人と登校して来た。

分かったことは直人の登校時間が早いこと。

俺が早く家を出た時は必ず登校中に会う。

なんか、意外だな。
直人は隠れシッカリ者なのかもしれない。

なんて意味不明なことばかりを考えていた。


ふと顔をあげると、正面から真田が歩いて来ていた。

真田と目が合う。

「あ、真田!おはよっ」

朝から真田と目が合ったことで俺のテンションはハイ。


コクン。
微笑み頷く真田。

これが真田流の“おはよう”なんだよな。

最近、真田のことがわかって来た気がする!!



なんて1人で調子に乗っていた。




休み時間になり、長野に教室の端に呼び出された。


「何か…用…?」


いつもと雰囲気が違う長野に若干ビビりながらも尋ねる。


「お願いがあるの!!」

手を合わせて俺にお願いする長野。


「……お願いって?」

「美和のことなんだけどさ、」


“美和”


真田の名前が出ただけで
ドクン。と胸が高鳴る。


「坂井くんと挨拶がしたいみたいなのよね…」

“坂井くんと挨拶がしたい”
その一言に舞い上がる俺。

その事を悟られまいと、それっぽく誤魔化してみた。

「挨拶…?」






「そ。坂井くんがいつも挨拶してくれるのに申し訳ないんだって」


そんな事、思っててくれたんだ。


真田が1分でも、1秒でも、俺の事を考えてくれていたんだと分かるととても嬉しくなった。


「どんな風にすればいいワケ??」

挨拶って言ったって、言葉を発することの出来ない真田にどう挨拶しろって言うんだよ。


「うーん……こんなのは??」

そう言った長野を見る。

自分で自分を抱きしめている長野。


これは要するに…

ハグしろと……!?







「ないからっ!//」


ビックリし過ぎて思わず大きな声がでた。

「ちぇー。」

残念そうにする長野。

本気だったのか……!?


あ、そうだ。


「ハイタッチめいた事は…??」


俺が思いついた事。

ハイタッチはさすがに真田の性に合わないだろうから、“ハイタッチめいた事”。


「………」

俺の提案に何も言わない長野。

え…却下?!

予期せぬ展開に1人驚いた。


「長野…さん…?」






「いいわね♪」

笑顔で答える長野。


「あ、うん。え??」

「ま、その旨は美和に伝えとくわ」

それだけ言って立ち去る長野。



何だってんだよ……

ハイタッチめいた事。明日からすんだよな??


真田と手が触れると考えただけでドキドキして、緊張した。


なんか俺、ヘンタイみたい………



そんな風に考えては落ち込んだ。





その日の放課後。

帰ろうと立ち上がった時、制服の裾を引っ張られる感覚がしたから振り返った。


すると、後ろには俺の制服の裾を握り俯いている真田がいた。


ドクン。


そんな可愛いことされたらヤバいから。


「真田……?」

俺は平静を装って真田を呼ぶ。


すると、真田から手紙のような紙きれを渡される。


小さいメモ帳……??


ワケがわからず真田を見つめていると、握っていた制服を離した。


そして、

“またね、バイバイ”

口パクでそう言い走り去る真田。



真田の口が動くのを初めて見た。

その口で、可愛い声を出す真田を想像してしまったんだ。


俺は真田からもらった紙を握る。


そして、堪らなく“好きだ”と思ってしまったんだ。




そして、渡された紙を開いてみると

“坂井くんへ
雫から聞きました。
ありがとう。
明日から、楽しみです。”

うわ、嬉しいって、楽しみだって!!

思いがけない真田からの手紙にテンションが上がる俺。

あれ、まだ何か書いてある。



“それから……
『miwa-********@ne.jp』
良かったら、メールしませんか?
もっと坂井くんと仲良くなりたいです。

真田。”



うそ……!?
これ、真田のアドレス?!

マジ!?

メール、してもいいの!!?


柄にもなく大喜びする俺。

「陸翔、帰ろーぜっ」
そう言って後ろからど突いて来た直人。

いつもなら怒るけど、今の俺は無敵だ!!とか意味不明なことが頭の中で繰り返される。


「おう♪帰ろーぜ」

「あ、あぁ」