「直人。」
休み時間、
俺は直人の席に行き、相談しようと決意した。
「ん…?なんだ?」
椅子に座ったまま俺を見上げる直人。
「俺…俺さ。直人に…相談があるんだ」
俺の一言に直人は一度目を見開き、柔らかく笑った。
「……待ってたよ」
直人とは思えないような表情だった。
そっか。
俺、甘く見てたんだな。
直人と俺、もう長い付き合いじゃん。
親友じゃん。
俺のことくらい、お見通しだよな。
暖かい直人の表情に、自然と俺も笑顔になる。
「ずっと…待ってたんだ。」
困ったように笑う直人。
「あぁ…ありがとな」
やっぱり、コイツとダチで良かった。
コイツなら、俺のことを一番にわかってくれると思った。
「俺、な…?」
ポツリポツリと話し出す。
その間、直人は一言も話さずに真剣に俺の話を聞いてくれた。
ありがとな。
私、最近おかしいみたい。
前の席に座る坂井くんの背中を見るだけで。
振り返るたびに私に向けてくれる笑顔で。
話す声を聞くだけで。
こんなにも胸が苦しくなる。
私………
好きかも知れない。
ううん、好き。
だけど、私には許されないことだから。
私は、人を好きになっちゃダメだから。
私が人を傷つけることしか出来ないから。
坂井くんが好き。
だけど、この気持ちは伝えられない。
だけど……
だけど、好きでいることくらい良いよね?
ねぇ、美波。
私、坂井くんを好きでいていい……??
雫に相談、してもいい……??
恋、してもいい……??
私はその夜、雫にメールをした。
「“雫へ”
私ね、好きな人が出来たの。
雫だったら、分かるよね??
……私、坂井くんが好き。
人を好きになっちゃいけないのはわかってるの。
だけどね、好きなの。
どうしたら、いいんだろう…」
こんなメール、送ったって雫を困らせるだけなのに……
送ったあとに後悔する。
ピロリロリン♪
携帯が鳴る。
画面を確認すると“しずく”の文字。
「“美和へ”
美和、あんたバカじゃないの?
好きになっていいじゃない。
幸せになったっていいじゃない。
あんたは、何も悪くないんだから。
あんたは、美波の分まで笑わなきゃ。
美波の分まで、幸せにならなきゃ。
わかった?」
雫……
“ありがとう”
私はそれだけ雫に送ると、携帯を閉じた。
雫、なんでこんなに暖かいの…??
なんで、なんで……
欲しい言葉をくれるの……??
頬を涙が伝う。
ピロリロリン♪
その時、再び携帯が鳴る。
携帯を開き、メールを確認する。
すると、雫からだった。
「堂々と頑張りな!私はいつでも美和の味方だから!(b^ー°)」
私、雫と友達で良かった。
改めてそう思った。
次の日、学校に行くと坂井くんはすでに席に着いていた。
私が席に向かっていると、坂井くんの席の前で坂井くんと目が合った。
「あ、真田!おはよっ」
相変わらずニカッと少年のようなスマイルを見せる坂井くん。
だけど、そんな彼に私は返事すら出来ない。
どうしようもなく情けなくて、悲しくて……
今日も私は挨拶をしてくれる坂井くんに頷くことしか出来ない。
もどかしくて、もどかしくて。
こうなったのは、自分のせいなのに。
こんな風になってしまった自分を恨んだ。
そんな時、雫からアドバイスが。
“坂井くん、美和のこと知ってるんだし。2人だけの挨拶を考えるとかは?”
とのこと。
2人だけの挨拶。ねぇ……
どうしよう…
休み時間になり雫がなにやら坂井くんを呼び出していた。
「……?」
教室の端で話す2人に耳を傾ける。
「…これは?」
「…ないからっ!!///」
坂井くんの叫び声が聞こえる。
何を話してるのかな??
朝。
人も少ない教室。
俺は席に着き考え事をしていた。
今日は直人と登校して来た。
分かったことは直人の登校時間が早いこと。
俺が早く家を出た時は必ず登校中に会う。
なんか、意外だな。
直人は隠れシッカリ者なのかもしれない。
なんて意味不明なことばかりを考えていた。
ふと顔をあげると、正面から真田が歩いて来ていた。
真田と目が合う。
「あ、真田!おはよっ」
朝から真田と目が合ったことで俺のテンションはハイ。
コクン。
微笑み頷く真田。
これが真田流の“おはよう”なんだよな。
最近、真田のことがわかって来た気がする!!
なんて1人で調子に乗っていた。