ピチピチ……
小鳥のさえずりが聞こえ、桜の舞い散る今日。
今日は始業式。
俺は今日から高校2年生となる。
俺の名前は坂井陸翔。
頭はソコソコいいんだぜ?
早起きは苦手だけどな(笑)
ま、そんなこんなで今は登校中。
「おはよーっ」
いきなり後ろから背中を叩かれる。
「うす」
“おはよーっ”
なんて朝一に大きな声を出すのは俺の親友……なのかな。水野直人(みずのなおと)ってヤツ。
カッコいい……んだよな。
アホだけど(笑)
直人とはかれこれ4年の付き合いになるかな。
中1の時からずっと同じクラス。
ま、さすがに今年は違うだろうけど。
俺は途中で合流した直人と一緒に学校へ向かった。
「嘘だろ……」
俺は目の前にあるモノをみて呟く。
「嘘じゃあねぇなっ」
落ち込む俺とは打って変わってハイテンションな直人。
そう、
目の前にあるのはクラス割表。
“2-1”
そう書かれた表の中には、
“坂井陸翔”
“水野直人”
の2つの名前がハッキリと書かれている。
「また同じクラスになっちまったなー」
笑顔で俺を見る直人。
「はは……ははは」
「ちょ、喜べよー!!」
俺の反応を見て慌てる直人。
ウケる。
本当は嬉しいよ、俺。
直人と同じクラスで安心してる。
ま、本人には黙っとくかな(笑)
「なぁ陸翔ぉー!!」
横でぐずる直人。
「はいはい。さ、教室行こうぜ」
俺がそう促すと、
「おぅ!!」
元気よく返事をする直人。
見てて飽きないなぁ。
教室に着くと、すでに半分くらいの人が集まっていた。
「お!陸翔じゃん!」
「水野とまた同じクラスか!」
と、通り過ぎていく新しいクラスメート達とたくさんの言葉をかわし、席に着く。
席は窓際から2番目の後ろから2番目。
黒板を見ると、
“9.坂井陸翔”
と書かれていた。
出席番号は9番みたいだな。
直人は廊下側から2番目の真ん中。
やっぱり離れたか。
ま、仕方ないよな。
名前が名前だしな(笑)
そして周りを見回した。
え!?
ここどういうこと!!?
俺の席の周りはほぼ女子。
イジメですか…??
俺、女子ってちょっと苦手なんだよな。
そんなことを思いながら、1人落ち込んだ。
直人なら喜ぶのにな、この状況。
そんな感じで席でボヤーっとしていると、担任らしき人が教室に入って来た。
「はい注目ー。私が、今日からこのクラスの担任になった夏井だ。1年間よろしくな!!」
元気な声で挨拶をするのは、保体の夏井。
俺はまぁまぁ嫌いじゃない。
熱血教師って感じだけどな。
「早速だが、今から始業式だ。急いで廊下に並べー!!」
先生の一言で生徒たちが一斉に動き出す。
俺も急ごうと椅子から立ち上がった。
すると、
…ーガシャンー
大きな音が後ろの席からした。
びっくりして思わず後ろの席を見てみると、後ろの席の女子が筆箱をびっくり返していた。
「わー。やっちゃったねー…」
周りの女子は見たはものの手伝わない。
その気持ちも分かる。
なんて言ったって夏井が廊下で“急げー”と声をかけているから。
いつもだったら俺も素通りする。
だけど、何でか分からないけど……
気づいたらその子が落とした筆箱の中身を一緒に拾ってたんだ。
「急げーーっ」
廊下からは変わらず夏井が叫んでいる。
俺とその子は急いで落ちた中身を拾った。
そして、最後の1本。
赤のボールペンを俺が拾い、その子に渡した。
“ありがとう”
そんな言葉を期待していたけれど、彼女は俺にぺこりとお辞儀をすると早足で廊下に並んだ。
急いでるからか、
と、勝手に解釈をして俺も列に並んだ。
長い始業式も終わり、教室に入る。
今って休み時間??
良く分からなかったから、席に着いたまま読書を始めた。
すると、
ーーカサカサー
机の上に何か置かれた。
本から目を離し、机を見る。
そこには小さな白い紙切れが置いてあった。
何コレ。
俺は本にしおりをはさみ、机の上にある紙切れを取った。
中を見てみると、
“坂井くんへ”
そう書かれていて、どうやら手紙のようであった。
さらに読むと、
“さっきは筆箱の中身を拾うの手伝ってくれてありがとう。真田”
と書かれていた。
後ろの子、真田って言うんだ。
ーーーー今日は、初めて君の名前を知った日でした。
翌日。
俺は直人に出会うことなく一人で登校した。
教室に入り、自分の席に向かう。
そこで、ふと後ろの席を見た。
すると、真田?が俺を見ていて目が合った。
目が合った途端、どうしようもなく恥ずかしくなった。
中学生かよってくらい。
こんな事で真っ赤になるなんて。
俺はそのまま俯き、席に着いた。
って言うか、真田可愛くね!??
昨日は焦ってて、全然顔みえなかったんだけど、さっき見た限りじゃかなり可愛い。
何が何だか分からなくてテンパる俺、
真田は、恥ずかしくなかったのかな??
俺は気になって、そっと後ろを振り返った。
すると、
「ー…///」
真田の顔は真っ赤になっていた。
真っ赤な頬を隠すように両手で包みこむ真田。
そんな姿にちょっと、ドキン。と胸が高鳴った。