「りく…と……?」
陸翔の焦点が、あっていない。
目を開けて、こちらを見ているのに…
陸翔と目が合わない。
なんで………?
ウソ、でしょう………?
「…大丈夫。」
突然、陸翔が話す。
「…しばらくすれば見えるようになるってさ。これは後遺症。」
力無く笑う陸翔。
後遺症……
「見える…ようになるんだよね…?」
「あぁ」
ニコッと笑う陸翔。
ウソではなさそうだ。
「これから、大変なんだ。胃が食事になれるまでがね」
困ったように笑う陸翔。
そっか。
2ヶ月くらい、何も食べてないんだ。
胃が、もたないよね。
「陸翔っ!?」
「坂井くん!?」
そこへ、雫と水野くんがやってきた。
「陸……」
嬉しそうに、“待ってたよ”とでも言っているような優しい目をする水野くん。
「あれ……?」
「陸…目……」
2人が、陸翔の異変に気づいた。
それから、陸翔は再び説明した。
「そっか…」
「…でも、目が醒めて本当に良かった」
3人、涙ながらに話をした。
もう、夏休みが終わったってことか。
陸翔、ビックリしてたっけ。
その後、翠さんが職場から来て、本当に本当に感動だった。
陸翔は、何度も涙を流しながら“もう、いいよ”って言ってた。
陸翔の思いも、翠さんの思いも、ちゃんと伝わったね。
本当に、良かった。
そうこうしていると、雫がこんな事を言い出した。
「ささ、お母様も直人もっ。後は若い2人に任せましょうよ♪」
「「えっ//」」
「それもそうだな♪」
「「ちょ//」」
「じゃ、お母さんまた明日来るわね~」
「「いや//」」
「「「さよなら~」」
パタンと扉がしめられた。
「「…………」」
しばらくの間、2人の間に沈黙があった。
う………
私、沈黙って苦手。
な、何を話したらいいのか分からない。
いっぱいいっぱい、話したいことがあったのに、いざとなると頭がパンパンで何も話せない。
だけど、伝えたい。
この2ヶ月間、言えなかった思いを。
陸翔side
目を、覚ますことが出来た。
……出来たのに、実感がない。
それは、目が見えないせい。
だけど、すぐに見えるようになる。
早く、美和の顔がみたい。
ずっと願っていたんだ。
どれくらい眠っていたのか分からない。
ただ、起きたときにはわずかに光があって、ナースコールを押すと看護師さんたちに悲鳴をあげられ……
みんなが口々に“奇跡だ”とか、“彼女さん、良かったわね”と言っていた。
それから次第に視界が薄れ、医師によるとちょっとした後遺症らしい。
すぐに見えるようになると聞いて、安心した。
そして、堪らなく美和に会いたくなった。
しばらくして、病室の扉が勢い良く開いた。
「陸翔…っ!!」
可愛らしい声が響き渡る。
美和だ。
なんとなくだけど、わかる。
眠っている間、毎日聞いていた声。
俺が、待ち望んでいた声だ。
それから、たくさん美和たちと話した。
そしたら、長野のよくわからない気遣いから美和と2人きりにされた。
いや、嬉しいけどさ……
久しぶりの会話なんだよ?緊張、するし恥ずかしいし……
「陸翔………」
意を決したように美和が話しかけてきた。
「…ん…?」
「…私、私ね。この2ヶ月間で気づいたことがたくさんあるの。」
「私、陸翔がいないとダメみたい。
それから、陸翔が大好きで仕方ない。
陸翔が眠ってる間、色んなことがあったよ。それで…それで…」
伝えたいことがありすぎて、頭がこんがらがっていく。
もっと、もっと伝えたいことがあるのに。
うまい言葉が見つからない。
「…うん…」
陸翔は、少し照れくさそうにしていた。
「……大好き」
そう言った私の言葉に、陸翔は笑った。
「………俺も」
陸翔はそう言った。
その言葉が、すごくすごく嬉しかった。
ずっと、待ってた。
「……私、待つよ」
「え…?」
「陸翔が、私を見てくれるまで。
私は陸翔の光になりたい。
ううん。今だけじゃない。ずっと」
そう言って陸翔に抱きついた。
「……うん。ありがとう、美和。
ちょっとでも早く、治すからな」
陸翔も抱きしめ返してくれた。
陸翔、あったかい。
「…俺、…から」
小さな声で言った陸翔の声は私には聞こえなかった。
「ん?」
「俺、美和を離さないから。
美和が嫌って言っても離してあげない」
イタズラっぽく笑う陸翔。
「わ、私だって陸翔が嫌って言っても離れない!!!」
「うん、ずっと一緒な?」
「うん、ずーっと一緒だよ。誓う」
「俺も誓う。」
「陸翔、大好きっ」
「俺は“愛してる”けど?」
「もう……///」
Fin
皆さん、はじめまして、朔梛です。
この度は、キミ声を読んで頂きありがとうございました!!!
この作品は、ずっと前からあっためておいた作品で、「小説書き始めるなら新年から!!」という作者の意味不明考えから、1月1日に書き始めました。
そして、1ヶ月と6日で完結へと導くことが出来ました。
本当にありがとうございます。
途中、皆さんからの暖かいメッセージに励まされながらも、野いちごグランプリ出展を目指して頑張ることが出来ました。
この作品で、何か伝わるものがあればと思います。
これからも時間を見つけては小説を書いていきたいと考えていますのでよろしくお願いします。
ではまたいつか(o^∀^o
朔梛でした(≧∇≦
2012.02.06.MON.