翌日。
俺は直人に出会うことなく一人で登校した。
教室に入り、自分の席に向かう。
そこで、ふと後ろの席を見た。
すると、真田?が俺を見ていて目が合った。
目が合った途端、どうしようもなく恥ずかしくなった。
中学生かよってくらい。
こんな事で真っ赤になるなんて。
俺はそのまま俯き、席に着いた。
って言うか、真田可愛くね!??
昨日は焦ってて、全然顔みえなかったんだけど、さっき見た限りじゃかなり可愛い。
何が何だか分からなくてテンパる俺、
真田は、恥ずかしくなかったのかな??
俺は気になって、そっと後ろを振り返った。
すると、
「ー…///」
真田の顔は真っ赤になっていた。
真っ赤な頬を隠すように両手で包みこむ真田。
そんな姿にちょっと、ドキン。と胸が高鳴った。
真田、めちゃくちゃ可愛くね?!
1人テンパる俺。
真田、こんだけ可愛いんだ。
きっと可愛い声何だろうなぁ……
なんて、ふと思った。
声、聞いてみたいな。
よしっ
俺、こう見えて行動力あるんだぜ??
俺は椅子に後ろ向きに座り、真田の方を見た。
真田はまだまだ顔が真っ赤だった。
いや、俺が照れるじゃん。
そう思いながらも俺は真田に話しかけた。
「俺、坂井陸翔。1年間よろしくな」
真田に握手を求めてみた。
すると、
ぺこり。お辞儀をした真田は俺と同様に右手を出してきた。
そしてお互いに握手をした。
ってか、“ぺこり”だけ??
もしかして……
男子苦手とか!!?
うわ、やっちゃった。
そうだよな、普通そうだよな。
可愛い女子ほどそんな感じじゃん??
うわ、どうしよう。
真田、大丈夫かな……
俺は恐る恐る真田にもう一度言ってみる。
「よろしく…な??」
コクンコクン。
大きく頷く真田。
頷く真田は笑顔。
嫌われてはないって思っていいよな??
1人納得しながら握手をした。
真田、なんだか可愛くて。
笑顔も可愛くて。
のどの辺りがキューってなった。
何だろう、この感じ。
初めてでよく、分からなかった。
今はただ、
“真田の声、聞きたいな”
なんてぼんやりと考えていた。
その翌日、俺は必死だった。
何にかって??
“真田の声を聞くこと”に。
こんなにも可愛く笑う君は、
こんなにも儚い君は、
一体どんな声で話すんだろう。
気になって気になって。
夜も眠れなくて(昨日だけだけど)
今までに、こんなにも1人の女の子の事を考えたことってない。
この気持ち、何だろう。
なんてのは嘘。
本当は気づいてた。
初めて知ったこの気持ちに、
なんだか恥ずかしくなった。
初めて気づいたこの気持ちに、
どうしていいのか分からず戸惑った。
初めて芽生えたこの感情に、
気づいていいのか迷った。
だから、俺は隠してただけなんだ。
本当は自分でも気づいてたのに、誰かに気づかれたくなくて。
だけど、認めてしまった。
俺は、俺は………
真田が好きなんだ
気づいてしまったらもう、止められない。
今にもこの感情が溢れ出してしまいそうで。
真田の後ろ姿を見るだけでドキドキした。
真田の前の席だから、毎日毎時間、背中が熱くて。
だけど、今の俺には耐えられなくて。
白いうなじとか、見ているだけでドキドキが止まらなくて。
その背中に手を伸ばしてしまいそうで。
“好き”が溢れ出しそうで。
だから、
そんな愛しい君の声が聞きたくて……
俺は、勇気を振り絞って真田に声をかけた。
「真田!!」
あまりに意気込みすぎて、思っていたより大きな声が出た。
クスクス笑う真田。
「なぁなぁ真田。」
俺がそう言うと、
“なに?”
とでも言っているように首を傾げる真田。
あまりに喋らない真田に、俺はムキになったんだ。
「“水野直人”ってヤツ知ってる??」
俺が尋ねると、
ブンブン。
首を横に振る真田。
「俺とソイツね、中1の時からずっと同じクラスなんだぜ??腐れ縁ってこういう事だよな」
そう言うと、
“へー”
と言った感じに頷く真田。
何でだ……??
何で、話さないんだよ……
俺は不思議に思いながらも、たくさんたくさん真田に話しかけた。
だけど、その間も真田から声を聞くことは出来なかった。