そうしてお母さんの声が止み、私のもとから離れていった。


気付けばお母さんは、彼の前に立っている。


「ありがとう、光君。本当に、ありがとう」


お母さんは涙声でそう言うと、深々と頭を下げた。


たった一人のびしょ濡れの少年に向けて。


「やっ、やめてください、お母さん。俺自身すごく心配だったから。とにかく無事でよかったです」


照れ臭そうに頭を掻きながら笑う彼。


外は雨が止んだようで、玄関が淡いオレンジに染まりゆく。


そのあたたかな光に包まれた彼は、眩しいくらいに輝いて綺麗だった。