可笑しすぎて流す涙もない。


「何があったの……、さゆ」


ぽつりと呟いた彼の指先が戸惑って、強ばっている。


私からは、自然と乾いた笑い声が漏れた。


何かがあったわけではない。


それは今に起きたことではなく、私がこの世に生まれてきたことで起きたのだ。


私が気付くのが馬鹿がつくほど遅かった、それだけにすぎない。


「やっとね、現実が見えたのよ。笑えくらい最低な自分がね」


私は今まで現実を責めてきた。


でも、それは私の大きな過ちだ。


「お母さんに生まれてこないほうがマシだったって言った。でも、逆だよね」