私は結局、五体満足な人に憧れて、理想を押しつけているだけなのかもしれない。


ただの僻みで、理想論にすぎないなのかもしれない。


だけど、そんな五体満足な身体を無駄にするような生き方は、私は絶対許せないんだ。


彼にはそういう生き方だけは、どうしてもしてほしくない。


もしそうなれば、私は彼を今までのようには想えなくなるから。


「ごめん……。あっ、何か飲み物でも買ってくるよ」


だけど、想いは簡単に伝わるものではない。


まるで私を遠ざけるように、すくっと立ち上がった彼の背中が遠かった。


誰も寄せ付けない透明な壁を作られたように、近付けそうもなかった。