張り詰めたような声が、何故か私の動きを止めた。
静かだけど、一瞬にして緊張の糸がぴんと張る。
「返事、聞いてないよ、まだ……。それが返事なの?」
背中越しの声が、いつになく擦れて弱い。
顔が見えなくてよかった……。
彼は他人のためにも、苦しい顔する人だ。
私に優しい世界は似合わない。
この、色に溢れた居心地の悪い世界で、私の生きやすい場所はどこにもありはしないのだから。
かたく握った手の平に爪が刺さる痛みだけが、今は私を私として保ってくれている。
だから、私は喉からやっとのことで言葉を絞りだした。
「……そうよ、これが返事――」
今度こそ、おしまいだ。