お母さんは神妙な顔をして立ち尽くしてる。


私はその言葉に、名前に、耳を疑った。


時が止まった気がした。


耳にはお母さんの言葉が響いて、頭は理解できずに浮いてるみたいで……。


本当に彼が、来てるっていうの――?


私は気付けば車椅子を目一杯走らせていた。


お父さんの言葉より、お母さんが動くのより、ずっとずっと速く。


リビングを出て、眩しい光の差し込む開け放たれた玄関へ。


自分でも何をしたいのかはわからない。


でも、この目がこの心がその姿を確かめたいと言って、たった一人で外へ飛び出した――。


何でいるの……。


そこには、困ったような笑顔を浮かべる、変わらぬ彼の姿があったんだ。