私は当たり前のように
『わかった。』
と答えた。


そのときは、悲しいだとかなくて、ただ終わりなんだなって思ってた。


奏は受話器の向こうで
なにか言いたそうに
ブツブツ呟いている。


『奏?』

名前を呼んだのも
何ヶ月ぶりだろうか。


なぜか自分が言った言葉がくすぐったくて。


『なんでもないよ。』

奏は呟き沈黙が流れ、

『じゃあ切るね』


なぜか切りたくない気持ちになって、どうしても返事が出てこなかった。


『俺さぁ』


奏がいきなり話し出し私は受話器を握りなおした。


『なに?』

手がかすかに震えてきた。

『芽衣のこと本気で好きだった。』

この言葉を聞いた瞬間息がキュッとなった。

奏はまだポツポツと話す。

『俺、芽衣と付き合えてよかった。』

私もだよ。
声にはでない言葉が
心を駆けめぐる。

『俺、芽衣のためになんもできなかった。楽しい思いだってさせてやれなかった、幸せにできなくてごめんな。』

奏が悲しく笑う顔が浮かんだ。奏は悪くない。
叫びたかった。

『でも、本気だったから。好きだったから。こんな別れ方しかできんで、ごめん。いままでありがとう。』

とめどなく
頬を涙がつたった。