楓に連れられる事約五分。
部屋に着くまでに五分ってどんだけ家でけーんだよ?!
「ん、どーぞ」
楓が部屋の扉を開く。
「あ、どーも…」
部屋に入ると、後ろで聞こえたパタンと扉が閉まる音。
「そんなとこ突っ立って無いでこっち座れば?」
気が付くともうソファに腰掛けている楓。
「…うん」
そのまま突っ立って居る理由も無いので、俺も近くにあったベットに腰掛ける事にした。
「…晴さ、誘ってる?」
「は?」
「(成る程…無自覚って訳か。どおりで兄貴が夢中になるワケだ)」
「どーした?」
「…何でもねーよ。ところでさ、その格好気に入ってんの?笑」
「は、はぁあ?!お前、ふざけんなよ!!俺は男だっ!こんな格好気にいるわけねーだろぉっ?!」
ほんと何だコイツ。
会ったばっかだけど何か蓮に似ててムカつくっ!
「…なら着替える?」
「着替えられたらこんなもん着てねーよ。」
「じゃあやっぱり気に入っーーー」
「着替えがねーんだよ、馬鹿っ!!!」
そんな事もわかんねーのかコイツは…!?
ムスッとしていると立ち上がって何処かへ向かった楓。
…もしかして、怒らせちまったのか…?
蓮の弟だからって軽い気持ちで言い返したりしてたけど、今日初めて会ったばかりな奴な訳で…
や、やっぱり言い過ぎたよな?
「ぁ…か、楓っ!!」
急いで後を追いかける。
隣の部屋に居た!!
後ろを向いていてこちらには気付いていない様子だ。
大きな声で名前を呼ぶのも恥ずかしかったので、後ろから楓の服の裾をちょびっと掴んだ。
「ーーーっ!!」
「俺だよ…その、さっきからゴメン…
俺生意気な口ばっかで…怒ったなら謝るから…」
そろりとこちらを見た楓。
俺も視線を上に向ける。
「(…しかもツンデレ。)」
「楓…?」
「…怒ってねーよ。それよりほら、これ着ろ。」
そう言うと手渡された物。
これ…
「ワイシャツ?」
「俺のだ。お前にはちょっとでけーかもなぁ」
クスクスと笑う楓。
もしかして、
「楓、ワイシャツ(これ)取りに来てくれたのか?」
「あ?まあな。」
「…有難うっ!!!」
二カッと笑う。
何故か顔が赤くなった楓。
「どぉかしたのか、楓?」
「…何でもねーよ。」
「??そぉか?」
「(コイツは色々とヤバイな…)」
ひとまず楓の居る部屋を後にして、俺は隣の部屋で着替える事にした。