俺の声に反応した龍也がピタリと足をとめた。

「あ…れ、蓮様っ…」

「…」

廊下のど真ん中。

どうやら龍也の移動計画は失敗したらしい。

でも、
『何だこの気まずさっ』

この会話一つない空気は思わず苦笑してしまう程だ。


「あ、た、龍也っ!行こうっ!!お前どっかに行こうとしてただろ?」

無理に会話を作って何とかこの場を切り抜けようと試みる。

「あぁ、そうだな!悪りぃ(笑)蓮様、失礼しますっ」

そう言って再び俺の手をとる龍也。

『これで蓮と会話しなくてすむっ…』

そう思って少し駆け足で蓮の隣を通過しようとした時ーーー


「あ、サヤカ?ん。今からいく」


蓮の携帯がなった。

それに答えた蓮。
そして聞こえた女の名前。




それを耳にした途端、俺の鼓動は早くなる。





何だよ…

何だよ何だよ何だよっ!!!!!




「え、晴っーー!?」


よくわからないこの感情が俺の中を一気に乱していく。


ヤダ。
ヤダ!嫌だっ!!!!


龍也の腕を外し、蓮の元に駆け寄る。