【龍也side】


「…はぁー…」

教室の片隅で1人大きくため息をついている俺の恋人(仮)。


「どーした、晴?」
直ぐに駆け寄ると、チラリと上目遣いで俺を捉える。

その顔は反則だ…。


「なんつーか…その…俺、疲れた!」
「え?」

もっと深刻な悩みだと思い込んでいた俺の口からは、気の抜けた声が漏れた。

「悩みって、それ?」
「それってなんだよ…。俺にしたらめちゃくちゃ大きな悩みだっての…。」

あぁ。
何だ、あれのことか。

「蓮様…」
「ーー!!」

海原蓮の名前を口にした途端、ピクリと動いた眉毛。

やっぱりその事か。

「なんてゆーかさ…俺、ほんと何であの人の事だけ忘れてんのかわかんなくて…。色々考えてたら疲れたっ」

何で忘れているはずなのに、晴(こいつ)の心を支配しているのはあいつなんだ…?

「…今は、焦らなくて良いんじゃねーか?」

そう言うと少し表情を和らげた晴。

「うん…そーだよな…!
そんな無理して思い出すような奴じゃ無いんだし!笑
そう言ってくれてありがとな、龍也!!」

なんて、笑顔でお礼を言ってくる。


その笑顔を見て胸が高鳴ると同時に、心の中に芽生えた罪悪感が俺を襲う。



晴は知らない。

気付いてない。


さっきの俺の言葉は最低だって事をーーー…。


焦らなくても良いって言ったのは、思い出さなくても良いと思ったから。

あいつとの記憶なんて全部思い出さないまま…



俺の事だけを見て欲しい…。



【龍也side END】