何か苦虫を噛み潰したかのような顔をしてそう呟いた海原さん。
でも、どうしても思い出せなくて。
「ほんと…ごめん、なさい…」
「いい…」
「へ?」
フワリと頬に置かれた手。
大きな手の平は俺の頬を簡単に包み込む。その手は冷たいけれど、どこかあたたかさが感じられて…
「お前はそんままでいいよ。
だから謝んな…っ」
…なんでだろう。
俺は何でこんなに優しくて、きっと1番忘れちゃいけない人を忘れたんだろう…。
「海原さん…ごめ…ンぅっ…!」
塞がれた唇。
この感じ、懐かしい…?
「んぁっ…はぁっ…」
暫くして離れて行った唇。
「ごめんは無しっつったろ?」
そう言いながら少し唇の端をあげて切なく笑った海原さんに、俺の心臓はドクドクと激しく脈打っていたーー。