「ケータはさ、アメリカにいつ頃行く予定なの?」

その問い掛けに、ケータは花火から目線を反らさぬまま、横顔で答えてきた。

「まだ分からないけど…多分、お金の貯まり具合で来年の春か夏かなぁ」


あたしも花火に目線を飛ばしながら話しをする。

「そうかぁ〜。じゃあ、来年はこうして二人で花火見れないかもね。」

思わず寂しい事を口にしているあたしが居た。

応援をする立場に居て、それを否定するかのような発言。


「何言ってんだよ!見れるって!」

ケータは笑う。あたしの顔を覗き込んで。

「エーコはさ、強いだろ?俺、エーコだから言えるんだ。エーコだから、安心してアメリカへ行ける。」



…強い?あたしが?



「お互い愛し合ってるんから、遠距離恋愛も成立するんだ。俺、エーコを信用して無ければ付き合おうなんて思わなかったよ。」


あたしも、信用してるよ…


「それに、一年だけじゃないか。一年経てばまた会える。一緒に居られる。そしたら花火も見れるよ!」


うん…



「エーコが強いのは俺はよく知ってる!絶対、日本で俺を待っててくれる人って。」



ケータ、ずるいよ。

そんな風に言われたらさ、あたしは強くて聞き分けの良い女でいなくちゃならない。



「お互いの成長が楽しみだね!あたしだって日本で磨きまくりだよ!!負けないから!」

精一杯の笑顔をしてみたわ。

遠距離を覚悟したあたしに、弱音を吐く必要は無いんだから…


だけど、

だけど…


「うわぁ〜すげぇ〜!!!!!」

連続で花火が打ち上げられた。

それはあまりにも今の心境と掛け離れ過ぎる、まばゆい光景。


「あたしも興奮したぁ!もう花火も終盤なんだよきっと!」

あたしは手を叩いてはしゃいだ。


先の事等、今考えても仕方ない。

今ある現実だけを楽しめば良い。


ケータは隣に居る。

あたしも隣に居る。