ケータの車に乗り込み、あたし達は桜鹿山へ向かう。

夜道は更に緊張を高め、ピンと張り詰めた空気は静けさを増した。

走り去る色とりどりのネオンは、二人を幻想的な闇へと引きずり込む様に感じる。

無言のままでいると、本当に今から『告白タイムです！』といったムードで車内がいっぱいに思え、あたしは口を開いた。

「初の桜鹿山だぁ〜凄い夜景綺麗なんだろうなぁ！」

実際、頭の中は『告白』で満タンだったが、それとなく１番無難で安易な言葉を言ってみた。

「しかも、鹿が居るしね〜！運良ければ鹿が見れるよ！」

「え！？鹿！？山に鹿なんているの？？」

あたしは興奮した面持ちで言った。

「あれ？鹿のこと知らないんだ。だから【桜鹿山】って言うんだよ。春は綺麗な桜が咲き乱れ、鹿も自由に育ちゆく…」

ケータは少しメロディを乗せて歌ってみた。

「知らなかったよ！鹿なんて奈良だけかと思ってた！！」

普通に野性のバンビが見れるなんて…

更に楽しさを増した。