次に、一つの公園にたどりついた。


あたし達は、ブランコにのったり、滑り台を滑ったり。

幼い時には、大きかった遊具も、今ではすっかり小さく見える。



暗くなり、2人でベンチに座って語り合いを始めた。

夜空にはキラキラと星がきらめき、所々に浮かぶ雲が、神秘さを増した。

夢中になりすぎて、すっかり時間を気にしていない2人が居た。

時間なんて、最初から気にするつもりが無かったのかも知れない。
お互いに、ケータイも時計も、車に置きっぱなしでここに居た。


「あ〜あ!俺のルアーには誰も引っ掛からない…」

ケータは大きなため息をつく。
趣味の一つである『釣り』に例えた恋愛話だろう。

あたしは、ケータの気持ちを探ろうと、その例え話に乗った。

「え〜、実際引っ掛かる人いっぱい居るでしょ!」

そう、事実ケータはモテる。

チェルシーの常連客を写真に撮り、店内に貼付けてあるスペースがある。

ケータは毎日きてた『チェルシーVIP会員』(本人が命名)な為、ケータの写真がいっぱい貼ってあった。

それをよく、女子高生達が見に来ていたのだ。

「ほら!この店に…」「本当だ〜ケータ君じゃん!カッコイイ〜」
と、いろんな女子高生が来た。

全然古着に興味無く、店に来たのは「ケータ君の写真がある」からだ。

ケータ君ってモテるんだなぁ〜とよく目を丸くした。

そんなモテモテケータ君だ。

実際付き合える子なら大勢居るだろう。


「いねぇよ。俺なんかのルアーじゃ…ぷかぷか浮いてるだけさ」

夜空を仰ぐケータは、とても切ない横顔を見せた。

あたしは確信をつこうと更に質問をぶつけた。

「じゃあさ、そのルアーを投げたい場所はあるの…?」

我ながら、遠回しではあるが直球な言葉を投げ付けたな、と緊張した。

「投げたい場所?…あるよ」