ボートを終え、あとは適当にドライブ。

小さな駄菓子屋さんを発見した。

それはあたしが幼少の頃に、お菓子を買う為に来た唯一の店。


「懐かしいよ〜!!ケータ君入っていい?」車を路駐し、二人で小さなドアを開けた。


薄暗い店内。狭い空間に所狭しと雑貨や菓子が並んでいる。

お菓子を選ぶ時のあたし達は必然的に距離が近くなっていた。

「じゃ、俺はこれ買おうっと」

「あたしは、これとこれと…」

「エーコちゃん買うねぇ〜(笑)」

あたし達は、レジに行きお菓子を購入。ケータはサッとお金を出した。
「これ、当たると良いなぁ〜」

駄菓子定番の、当たり付きガム。

「当たったら、もうひとつオマケでアゲルから、またおいでね」
駄菓子のお婆ちゃんが優しい笑みを向ける。

「はい!当たるんでまた来ます!(笑)」ケータは元気よく答え、店を後にした。

「マジ気さくで良いなぁ〜田舎は温かいよな!」ケータはガムの包み紙をあける。

「ケータ君、さっきの駄菓子のあたし分のお金!」そう言ってあたしはケータに小銭を差し出した。

「うっわ!マジ当たりだよ!ラッキー!俺貰ってくるわ!待ってて」

ケータは勢いよく車を下りて走っていった。

本当に当たるなんて…なんだかガム一つで嬉しくなってしまった。

お金を受け取らないのも、ケータが『おごって』くれたからなんだろう。

年下だけど、こんな気の使いをしてくれて、やっぱ男なんだなって感じた。

ケータは嬉しそうに戻るなり、あたしガムを渡した。

「はい!エーコちゃんにあげる。」

息を切らして、そう笑うケータが、愛おしくて仕方なかった。