あの演奏の日。

あれ以来、あたしとケータの仲は更に深まった。

顔を合わせば音楽について盛り上がり、他にも気の合う趣味が見つかる等、あたし達は常に語り合っていた。



ケータはこの頃すでに「アメリカへ留学したい」という夢を持っていた。

その話をする度ケータは目を輝かせ、自由の国アメリカへの希望を語った。

「アメリカで音楽を学ぶんだ。日本よりきっとすげぇ奴がわんさかしてるんだ。俺もあの自由奔放さを求めて旅してぇな。ここに居るより何かを掴んでいけるに違いない!」

とても、素敵な夢。あたしは絶対アメリカへ行って、大きくなって欲しいと思い、彼の夢を応援した。

あたしも留学してみたい。そんな一人だからだ。

けれども、うちにはそんな資金は無かった。

学生で留学している子達が羨ましかった。

結局、卒業後そのままあたしは働き、今ではお金を留学の為にと貯金をすることも無く、ただ日々大好きな古着に囲まれ働いていた。

それでも、外国への好奇心は強く、お金があれば行きたいと思っていた。

「頑張ってケータ君!あたしの分もアメリカを楽しんできて!!でも、居なくなると思うと少し淋しいなぁ~」

やはりこれだけ気の会う友達が居なくなるのは淋しいもの。

「大丈夫!俺、エーコちゃんが淋しい時は、アメリカから飛んでくるよ!!」

ケータは真っ直ぐ瞳を見つめる。

とても人懐こい笑顔を見せて。



あたしは、胸が頬照るのを感じた。