喫煙室から歩く間、あたしは涙が止まらなかった。


一目も気にならない。


ただ泣きながらケータに寄り添って歩いた。




お別れの時が来た。




「エーコ…」



あたしは、「いってらっしゃい」や「頑張ってね」や、とにかく色々な事を言いたかったのに、泣きすぎて何も話せなかった。


おもいっきり泣いていた為、声がうまく出ない。



しばらく沈黙が続いたが、時間が迫るのでケータはあたしを強く抱きしめ、キスをした。


「ごめん、話せなくて…話すと…泣きそ…。」


ケータの震える声に、あたしは更に涙が溢れた。

必死に顔を横にふり、「謝らないで」と示した。



「じゃ…行かなきゃ…」



ケータは手荷物を持ち、人の列に並んだ。



あたしは、ケータの姿が見えなくなるまでそのまま立っていた。



ケータは、何度か振り向きあたしを見つめた。



たまたま、ケータの前に並んでいたおじさんの家族が、あたしの近くに居た。


お母さんと小さな子供達は、「パパー!いってらっしゃい!」と笑顔で手をふっていた。


あたしも、同じように元気よくケータを見送りたい。



そう思ったけど、涙ばかりが溢れ出て、何も言えずに立ち尽くした。




せめて…


最後くらい…


ケータがゲートを通ったら「いってらっしゃい」って言おう…