演奏を終えたケータが一人フロアに出てきた。


ケータはあたしに気付いて、こっちに歩いてきた。



「凄いかっこよかったよ〜!!!やっぱりライブハウスでの演奏は違うね!!!」

興奮気味にまくし立てるあたしとは裏腹に、ケータは少し苦い表情を見せた。


「う〜ん…イマイチ。やっぱり駄目だなぁ。ちゃんと曲決めてからやらないと。ジャムしたって毎回うまくいくわけじゃないし…」


ケータは肩を竦めた。

「最後のジャムとかダラダラだったし。すげぇ駄目。あれはヒドイ。」



確かに…


見ていて、三人の息が合ってないのは分かった。


特に、ベースのテツとは。



テツの聞く音楽は、今時の洋楽だ。今時のロック。


テツの弾くベースは、かなり自己中なところが有り、本来ベースはドラムと共に、リズム隊であるべきだか、テツのベースは『メインギターか?!』と言いたくなる様な激しさを見せる。



それはそれで、今時な感じだが…



ケータは昔のロックが好きだ。


特に、ジミ・ヘンドリックスに憧れてるわけだから、激しいギタープレイを中心に、ベースとドラムはリズムを刻んでくれる程度がいいのだ。



つまり、この二人は合わない。



実は前に、タケ&テツのコンビに、「正式に三人でバンド組まないか?」と誘われていたが、ケータがOKしなかったのは、それが原因。



「タケのドラムは上手いし良いけど、テツのベースと俺は合わない」


これは、ケータが二人に誘われて、スタジオでセッションする度に、帰ってきては漏らすセリフだ。