中に入ると、煙草の煙りだらけの、ヤニ臭い空間があった。


ステージには…


ケータがワウペダルを踏み、微妙に利かせながら、カッコイイギターサウンドを爆音で掻き鳴らしていた。




それは、いつも部屋で見るギタープレイとは全然違う、ステージ上でのケータだった。



その変貌ぶりに、あたしは身体中に力が入った。






あたしは、その場に立ち尽くし、ステージに立つ一人のギタリストに夢中だった。




ケータ!!!


凄いよ、ステージはやっぱり迫力が違う!!


おもいっきりプレイ出来る分、身体と精神の入りようが違う。




ケータが使用しているギターは、あたしに演奏を初めて披露した時と同じギターだ。



品のあるサンバーストは、ステージを照らす照明に答えるよう、堂々たる印象を放つ。



やっぱりあのギターカッコイイ…


あたしは、ケータを瞬きが惜しい程見とれた。


下向き加減で、乱雑に伸びた髪が顔を覆う。

その隙間から、高くてキレイな鼻がのぞく。
さらに形の良い立体的な唇も見える。



ケータの、落ち着いていて、けれど激しいギターは、とても目立っていたと思う。