パシッと乾いた音がして 僕は梓に頬を叩かれていた。 もうほんとに、なんで? 梓は自分でも驚いた、という表情を 一瞬だけした。一瞬だけ。 「好きって 軽々しく言わない方がいいよ 先生。」 ジー…ジジジ…とセミが 鳴き始めた。 すると、 いつもの明るい梓の顔で 「さすがに勘違いしちゃう子が でてきちゃうってー。」 と言うと、 ネクタイを引っ張っていた 手を離した。